全世界で猛威をふるう新型コロナウイルス感染症ですが、日本国内においても未だ収束の目途が立たず、長く終わりの見えない経済活動の自粛は、多方面において深刻な悪影響を及ぼしています。特に、中小企業、小規模企業への経済的インパクトは計り知れず、資金繰り等の急激な悪化が懸念されます。

政府は新型コロナウイルス感染症により悪影響を受けた事業者を救済するため、融資や保証制度といった多様な資金繰り支援制度を設けました。特に中小企業や小規模企業に対しては、手厚い支援が用意されていますが、これらの資金繰り支援制度は多岐に渡り、かつ、各制度間において共通・類似した点も非常に多いため、各制度の違いを判別することは必ずしも容易ではないのが実情です。

そこで、本記事においては、主に中小企業及び小規模企業を対象とした各種資金繰り支援制度について、どのような事業者がどういった制度を利用できるのかをわかりやすく整理しました。まずは、自社がどのような制度を利用できるのか、業種や売上高の減少率を元に、以下の表1から表3の各チャートにてご確認ください。

各制度の詳細につきましては、別記事で整理しております。「新型コロナウイルス関連の資金繰り支援制度(政府系金融機関)」、「新型コロナウイルス関連の資金繰り支援制度(生活衛生関係営業事業者向け)」及び「新型コロナウイルス関連の資金繰り支援制度(信用保証付融資)」の各記事をご確認ください。

※2020年5月6日時点における情報に基づき記載しております。新型コロナウイルス感染症に関する各種制度は日々更新されているため、以下の内容が更新・変更される可能性にご留意のうえご参照頂き、最新の情報をご確認ください。なお、同様の理由により、本記事にて設定したリンク先のURLが予告なく変更される場合等がございますがあしからずご了承ください。
※本記事で取り上げる融資・保証制度、補助金・助成金制度の利用には、別途金融機関、信用保証協会その他関係行政機関の審査等があります。以下の内容は、必ずしもご希望の条件で融資・保証を受けることや補助金等の受給ができることを保障するものではないことにご留意ください。

Q1 資金繰り支援制度の全体像について教えて下さい。

新型コロナウイルス感染症で影響を受ける事業者への資金繰り支援制度には、(1)中小企業・小規模企業を対象とする制度と、(2)中堅・大企業を対象とする制度があります。前述のとおり、本記事並びに「新型コロナウイルス関連の資金繰り支援制度(政府系金融機関)」、「新型コロナウイルス関連の資金繰り支援制度(生活衛生関係営業事業者向け)」及び「新型コロナウイルス関連の資金繰り支援制度(信用保証付融資)」では、主に中小企業・小規模企業を対象とする制度についてご説明します。

(1) 中小企業、小規模企業とは

まず、中小企業・小規模企業とは、原則として以下の表1記載の要件にあてはまる企業をいいます。但し、制度によっては以下の要件とは異なる要件を設けているものもありますので、制度ごとに個別にご確認ください。

<表1:中小企業・小規模企業(原則)>

業種 中小企業
(以下のいずれかを満たすこと)
小規模企業
資本金の額又は
出資の総額
常時使用する
従業員の数
常時使用する
従業員の数
①製造業、建設業、運輸業その他の業種(②~④を除く) 3億円以下 300人以下 20人以下
②卸売業 1億円以下 100人以下 5人以下
③小売業 5,000万円以下 100人以下 5人以下
④サービス業 5,000万円以下 50人以下 5人以下

(2) 中小企業・小規模企業を対象とする資金繰り支援制度

主な制度は以下の表2のとおりです。非常に類似した支援制度が多数存在していますが、以下の手順に従うことにより、利用可能な支援制度の確認とその要件の検討をスムーズに行うことが可能です。

ステップ1(以下の表2から利用可能な支援制度を確認)
支援制度を利用する事業者の①売上への影響と②業種により利用可能な支援制度が異なります。①及び②については、本(2)において概要を説明していますので、そちらを参照しながら利用可能な支援制度を確認してください。

ステップ2(利用可能な支援制度についての詳細を検討)
ステップ1で利用可能と判断した各支援制度について、その詳細を、「新型コロナウイルス関連の資金繰り支援制度(政府系金融機関)」、「新型コロナウイルス関連の資金繰り支援制度(生活衛生関係営業事業者向け)」及び「新型コロナウイルス関連の資金繰り支援制度(信用保証付融資)」にてご確認ください。

なお、表2に挙げた制度の他に、小規模企業共済の貸付資格を有する契約者に対する「特例緊急経営安定貸付」について、貸付要件の緩和が実施されます。詳しくは、独立行政法人 中小企業基盤整備機構(お問い合わせ先: 共済相談室(コールセンター)、受付時間 平日9時~18時、電話 050-5541-7171)へお問い合わせください。

<表2:資金繰り支援制度一覧>

① 売上への影響(表2の縦軸)

創業年数に応じて、以下の表3記載のとおり売上高等を比較することにより売上への影響を判断し、その影響度合いに応じた救済制度が準備されています。

当該売上高等の比較方法は、政府系金融機関による各種融資制度(表2及び表3における青色部分)及び信用保証協会による各種保証制度(表2及び表3における緑色部分)ごとに概ね共通していますので(一部例外があります。)、以下の表3にてご確認ください。

なお、新型コロナウイルスに関連する各種資金繰り支援制度は創業3か月以上の事業者(但し、新型コロナウイルス対策マル経融資及び新型コロナウイルス対策衛経については、創業1年1か月以上の事業者)を対象としています。創業3か月未満(但し、新型コロナウイルス対策マル経融資及び新型コロナウイルス対策衛経については、創業1年1か月未満)の事業者の場合には、他の融資制度をご活用ください。

<表3:売上高等の比較対象期間>

02-1_資金繰り支援制度<表3‗売上高等の比較対象期間>

店舗の増加、合併や業種の転換を行った場合や、ベンチャー・スタートアップ企業のように、短期間に売上増加に直結する設備投資や雇用の拡大を行っている場合など、前年(前々年)同期と単純に比較できないときでも、新型コロナウイルス感染症の影響を受けている場合には、「創業3か月以上1年1か月未満」に準じた要件で比較できるように認定基準の運用が緩和されていますので、各窓口でご相談ください。

② 業種(表2の横軸)

  • 「セーフティネット保証5号」を利用できるのは一部の指定業種に属する事業を行っている事業者とされていましたが、指定業種が拡充され、2020年5月1日から2021年1月31日まで「セーフティネット保証5号」を利用できる指定業種は、一部例外業種を除く原則全業種となりました。詳しくは以下をご参照ください。
    セーフティネット保証5号の指定業種(令和2年5月1日~令和3年1月31日)
  • 「生活衛生関係営業」とは、厚生労働省が所管する法律「生活衛生関係営業の運営の適正化及び振興に関する法律」で規定する飲食業、理・美容業、クリ-ニング業、ホテル・旅館業など以下の18業種の営業をいいます。
<サ-ビス業>
1. 理容店
2. 美容店
3. 興行場(映画館)
4. クリーニング店
5. 公衆浴場(銭湯)
6. ホテル・旅館
7. 簡易宿泊所
8. 下宿営業
<販売業>
1. 食肉販売店
2. 食鳥肉販売店
3. 氷雪販売業(氷屋)
<飲食業>
1. すし店
2. めん類店(そば・うどん店)
3. 中華料理店
4. 社交業(スナック・バーなど)
5. 料理店(料亭など)
6. 喫茶店
7. その他の飲食店(食堂・レストランなど)

(3) 中堅・大企業を対象とする資金繰り支援制度

日本政策投資銀行及び商工中金が、新型コロナウイルス感染症による影響を受け、直近1か月の売上高が、前年又は前々年の同期比5%以上減少している事業者に対して行う、「危機対応業務」による資金繰り支援があります。詳しくは、日本政策投資銀行の新型コロナウイルス感染症に関する危機対応相談窓口(受付時間: 平日9時~17時、電話 0120-598-600 又は 03-3270-3211、休日9時~17時、電話 0120-598-600)又は商工中金の新型コロナウイルス感染症に関する特別相談窓口(受付時間:平日、土日祝日9時~17時、電話 0120-542-711)へお問い合わせください。

<参考|外部リンク>

中小企業庁ホームページ
・FAQ「中小企業の定義について」セーフティネット保証制度(5号:業況の悪化している業種(全国的))セーフティネット保証5号の指定業種を拡充します(令和2年5月1日~令和3年1月31日)

経済産業省ホームページ
・新型コロナウイルス感染症で影響を受ける事業者の皆様へ資金繰り支援内容の一覧セーフティネット保証4号の概要危機関連保証の概要セーフティネット保証5号の概要新型コロナウイルス感染症に係る認定基準の運用緩和について

日本政策金融公庫ホームページ
・衛生環境激変特別貸付<特別貸付>
・新型コロナウイルス感染症特別貸付
・【国民生活事業】新型コロナウイルス感染症特別貸付等に関するQ&A(令和2年4月13日現在)
・【中小企業事業】新型コロナウイルス感染症特別貸付等に関するQ&A(令和2年4月16日現在)
・マル経融資(小規模事業者経営改善資金)
・生活衛生新型コロナウイルス感染症特別貸付
・生活衛生改善貸付
・経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)

商工中金ホームページ
・新型コロナウイルス感染症特別貸付のパンフレット
・新型コロナウイルス感染症特別貸付に関するQ&A(令和2年4月9日現在)

日本商工会議所
・マル経融資(小規模事業者経営改善資金融資制度)の概要

厚生労働省ホームページ
・生活衛生関係営業概要

本記事でご説明いたしましたとおり、中小企業及び小規模企業への各種資金繰り支援制度は多岐に及びますが、利用できる制度は、売上高の減少率と業種により変わってきます。各制度の詳細については、「新型コロナウイルス関連の資金繰り支援制度(政府系金融機関)」、「新型コロナウイルス関連の資金繰り支援制度(生活衛生関係営業事業者向け)」及び「新型コロナウイルス関連の資金繰り支援制度(信用保証付融資)」をご覧ください。

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