はじめに

新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う長期にわたる経済活動の自粛により、事業者の資金繰りやローン返済等に甚大な影響が生じています。事業者への迅速かつ円滑な資金供給を実現するため、国は、実質無利子・無担保の融資制度を新たに設けるとともに、既存の融資制度の拡充等に取り組んでいます(各制度の詳細については別記事にて紹介しています。「新型コロナウイルス関連の資金繰り支援制度(総論)」、「新型コロナウイルス関連の資金繰り支援制度(政府系金融機関)」、「新型コロナウイルス関連の資金繰り支援制度(生活衛生関係営業事業者向け)」及び「新型コロナウイルス関連の資金繰り支援制度(信用保証付融資)」の各記事をご確認ください。)。

他方で、新規の資金供給のみならず、貸付条件の変更や返済猶予をはじめとする既往債務への対応も急務です。そこで、金融庁は民間金融機関に対して、政府系金融機関、信用保証協会及び地方公共団体との連携や協議に基づく新規融資への積極的支援に加えて、貸付条件の変更等の既往債務への柔軟な対応を促す要請を複数回にわたって公表しています。また、中小企業庁は、特に資金繰りへの影響の大きい事業者を対象に、「新型コロナウイルス感染症特例リスケジュール」の計画策定支援を実施しています。

本記事においては、新規融資への積極的支援や既往債務への柔軟な対応に関する民間金融機関に対する配慮要請やリスケジュール計画の策定支援等の取組みについて紹介していきたいと思います。

Q1 民間金融機関に対する配慮要請について教えて下さい。

新型コロナウイルス感染症の影響拡大を踏まえた事業者の資金繰りについて、金融庁は、民間金融機関に対して複数回にわたり配慮要請等を行ってきました。金融庁が公表した配慮要請について、資金繰り支援への実務上の影響という観点から、その内容を抜粋して以下のとおり整理しました。配慮要請の全文については、各リンク先のページ(外部リンク)をご確認ください。

「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」を踏まえた資金繰り支援について(2020年4月27日)

要請事項

各金融機関が、地方公共団体・信用保証協会と連携を図りつつ、「地方公共団体の制度融資を活用して、民間金融機関でも実質無利子・無担保の融資をうけることができる制度」の円滑かつ迅速な実施に向けた準備を行うための留意点等が要請されました。例えば、

・ 新制度の開始次第、逼迫度の高い事業者から、できる限り迅速に資金繰り支援を徹底すること。5年以内の据置期間について、事業者のニーズを踏まえた適切な設定を行うこと。

・ 事業者の利便に鑑み、制度融資の実施に当たっては、「金融機関ワンストップ手続き」を推進し、各種手続の一元化・迅速化を進めること。

・ 制度融資をはじめとする金融機関融資や、各種給付金の支給等が行われるまでの間に必要となるつなぎ融資等を積極的に実施すること。

日本政策金融公庫等との更なる連携の強化について(2020年4月21日)

要請事項

・ 民間金融機関として、つなぎ融資等の事業者への資金繰り支援を積極的に実施すること等。

「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」を踏まえた資金繰り支援について(2020年4月7日)

要請事項

・ 貸出等の条件となっている財務制限条項(コベナンツ)に事業者が抵触している場合であっても、これを機械的・形式的に取り扱わず、事業者の経営実態をきめ細かく把握し、直ちに債務償還等を要求することのないよう対応すること。

・ コベナンツの変更・猶予に関する事業者からの相談には迅速かつ真摯に対応すること。

・ シンジケートローンにおいては、関係金融機関が協力して一体的に対応すること。

・ 新型コロナウイルス感染症により影響を受けた顧客から支払猶予等の申出を受け、一定期間猶予した場合には、信用情報機関に延滞情報として登録しないこと等。

新型コロナウイルス感染症の影響拡大を踏まえた事業者の資金繰り支援について(2020年3月24日)

要請事項

・ 事業者の資金繰り支援に万全を期すため、日本政策金融公庫等との連携の強化に努めること。

・ 既往債務に係る条件変更を実施した事業者に対しては、条件変更後も継続して事業者の資金繰り支援や経営改善等の相談に真摯・丁寧に対応すること等。

新型コロナウイルス感染症の影響拡大を踏まえた事業者の資金繰り支援について(2020年3月6日)

要請事項

・ 既往債務について、元本・金利を含めた返済猶予等の条件変更について、迅速かつ柔軟に対応すること。

・ 民間金融機関の緊急融資制度の積極的な実施や、政策金融機関や信用保証協会による融資・保証制度の活用により、新規融資に関する事業者のニーズに迅速かつ適切に対応すること等。

新型コロナウイルス感染症の発生を踏まえた対応について(2020年2月7日)

要請事項

・ 事業者からの経営の維持継続に必要な資金の借入の申込みや、顧客からの貸付条件の変更等の申込みがあった場合には、適切かつ柔軟な対応に努めること等。

その他、金融庁の取り組む新型コロナウイルス感染症対策の施策等については、金融庁のホームページにてご確認いただくことが可能です。

<参考|金融庁ホームページ>
新型コロナウイルス感染症関連情報

Q2 新型コロナウイルス感染症の特例リスケジュールについて教えて下さい。

新型コロナウイルス感染症の影響を受けた中小企業に対して、各都道府県に設置された中小企業再生支援協議会(以下「協議会」といいます。)が、窓口相談や金融機関との調整を含めた特例リスケジュール(以下「特例リスケ」といいます。)の計画策定支援を実施します。

特例リスケの計画策定支援に関して、2020年4月1日付で、その内容・手続・基準等を定めた「新型コロナウイルス感染症特例リスケジュール実施要領」が策定されています。要領の概要としては以下のとおりです。

① 既往債務の負担軽減支援

・ 既往債務の支払に悩む中小企業のために、協議会が中小企業に代わり、一括して元金返済猶予の要請を実施。

・ 1年間の新型コロナウイルス感染症特例リスケジュール計画を創設。

・ つなぎ融資のための金融機関との調整業務を代行又は支援。

② 特例リスケ計画中の資金繰りと事業面のサポート

・ 資金繰りの継続的なモニタリング(月次チェック)及び適宜の助言

③ 特例リスケ計画終了後の本格的再生の実施

・ 特例リスケ計画期間終了後において、さらに本格的な再生支援を希望する中小企業に対しては、本格的な再生支援を実施

なお、特例リスケの計画策定支援の対象は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、一時的な業況悪化を来し、次のいずれかに該当する中小企業を目安として判断されます。

① 最近1か月の売上高が前年又は前々年の同期と比較して5%以上減少した者

② 業歴3か月以上1年1か月未満の場合は、最近1か月の売上高が、次のいずれかと比較して5%以上減少している者

(1) 過去3か月(最近1か月を含む。)の平均売上高

(2) 2019年12月の売上高

(3) 2019年10月から12月の売上高平均額

制度の詳細等については、中小企業庁のホームページにてご確認いただくことが可能です。

<参考|日本政策金融公庫ホームページ>
新型コロナウイルス感染症特例リスケジュール実施要領を制定しました
新型コロナウイルス感染症特例リスケジュール実施要領

さいごに

他記事で紹介しているとおり、新型コロナウイルス感染症により多大なる影響を受けた中小企業及び小規模企業を支援するため、政府等は多種多様な資金繰り支援制度や補助金・助成金制度を新設及び拡充しています(「新型コロナウイルス関連の資金繰り支援制度(総論)」及び「新型コロナウイルス関連の給付金・補助金・助成金(総論)」をご確認ください。各制度の詳細についてはそれぞれの記事にて別記事を紹介しています。)。

これらの支援制度に加えて、本記事でご紹介した金融庁及び中小企業庁による各種要請及び支援が行われることで、より多角的に中小企業及び小規模企業をサポートすることが可能となります。

新型コロナウイルス感染症の拡大という未曽有の危機により、多くの中小企業や小規模企業が、長期的な営業自粛や、事業・働き方の見直しを余儀なくされています。事業者の皆様におかれましては、本記事でご紹介したような金融庁や中小企業庁の取組みを踏まえ、新規の資金調達や既往債務の返済猶予等について取引先金融機関等と積極的にご相談いただければと思います。

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