「新型コロナウイルス関連の資金繰り支援制度(総論)」においては、新型コロナウイルス感染症により悪影響を受けた中小企業及び小規模企業を支援するための様々な資金繰り支援制度の全体像を、わかりやすく整理してご紹介しました。
そして、「新型コロナウイルス関連の資金繰り支援制度(政府系金融機関)」及び「新型コロナウイルス関連の資金繰り支援制度(生活衛生関係営業事業者向け)」では、新型コロナウイルス感染症により悪影響を受けた中小企業及び小規模企業を支援するための、政府系金融機関による各種融資制度の内容を制度ごとにまとめています。
本記事においては、新型コロナウイルス感染症により悪影響を受けた中小企業及び小規模企業が、民間金融機関から融資を受けるにあたって利用可能となる各種保証制度、並びに、利子・保証料の減免制度について、各制度ごとにまとめてご紹介しています。
※2020年5月6日時点における情報に基づき記載しております。新型コロナウイルス感染症に関する各種制度は日々更新されているため、以下の内容が更新・変更される可能性にご留意のうえご参照頂き、最新の情報をご確認ください。なお、同様の理由により、本記事にて設定したリンク先のURLが予告なく変更される場合等がございますのでご了承ください。
※本記事で取り上げる融資・保証制度、補助金・助成金制度の利用には、別途金融機関、信用保証協会その他関係行政機関の審査等があります。以下の内容は、必ずしもご希望の条件で融資・保証を受けることや補助金等の受給ができることを保障するものではないことにご留意ください。
Q1 セーフティネット保証4号・5号について教えて下さい。
セーフティネット保証とは、取引先の倒産や事業活動の制限、突発的災害、取引金融機関の破綻等が生じている場合において、経営の安定に支障が生じている中小企業又は小規模事業者を対象に、一般枠(通常時において利用可能な保証枠)とは別枠で、信用保証協会が実施する保証制度です。本制度の利用により、事業者は、都道府県や民間金融機関からの保証付融資を利用することができます。
セーフティネット保証には、制度の利用条件ごとに8種類が用意されていますが、今回の新型コロナウイルス感染症との関係では、セーフティネット保証4号(突発的災害により影響を受けている特定の地域の事業者を対象にしたもの)と5号(全国的に業況が悪化している特定の業種に属する事業者を対象にしたもの)の2種類が利用対象となります。
本制度を信用保証協会による一般枠の保証と併用することにより、事業者は、最大で5億6,000万円の保証枠を利用することができます。
また、信用保証付融資における保証料・利子減免制度を併用することで、都道府県や民間金融機関から実質的に無利子で保証付融資(保証料も実質的に無償)を受けることができます。
なお、特別利子補給制度と同様に、保証料・利子減免制度は、「利下げ」や「保証料の免除」ではなく、「保証料及び利息相当額の事後的な返金制度」という建付けとなっておりますので、この点ご留意ください。
[利用対象事業者の概要]
セーフティネット保証4号 | セーフティネット保証5号 |
以下の1及び2に該当すること。 1. 指定地域※1において1年間以上継続して事業を行っている※2こと。 2. 災害の発生に起因して、当該災害の影響を受けた後、原則として※、最近1か月の売上高等が前年同月に比して20%以上減少しており、かつ、その後2か月を含む3か月間の売上高等が前年同期に比して20%以上減少することが見込まれること(売上高等の減少について、市区町村長の認定が必要)。 |
以下の1又は2の要件を満たすこと(但し、上記1又は2の要件を満たすことについて、市区町村長の認定が必要)。 1. 指定業種※1に属する事業を行っており、原則として※2、最近3か月間の売上高等が前年同期比で5%以上減少していること※3。 2. 指定業種に属する事業を行っており、製品等原価のうち20%以上を占める原油等の仕入価格が20%以上上昇しているにもかかわらず、製品等価格に転嫁できていないこと。 |
<セーフティネット保証4号・5号共通(運用緩和)>
業歴3か月以上1年1か月未満の場合は、最近1か月を含む今後3か月間の売上見込額と前年同期との比較の代わりに、以下の(1)乃至(3)のいずれかの比較により、所定の売上減少要件を満たすこと(セーフティネット保証4号の場合には20%以上の減少、セーフティネット保証5号の場合には5%以上の減少)。 (1) 「直近1か月の売上高等」と「過去3か月(最近1か月を含みます。)の平均売上高等」との比較。 (2) 「直近1か月の売上高等」と「2019年12月の売上高等」との比較、及び「その後2か月を含む3か月間の売上高等」と「2019年12月の売上高等の3倍」との比較。 (3) 「直近1か月の売上高等」と「2019年10月から12月の平均売上高等」との比較、及び「その後2か月を含む3か月間の売上高等」と「2019年10月から12月の累積売上高等」との比較。 |
[保証制度の概要]
セーフティネット保証4号 | セーフティネット保証5号 | |
保証限度額 | 保証限度額:最大2億8,000万円
・ 普通保証枠:2億円以内 ・ 無担保保証枠:8,000万円以内(うち2,000万円については無担保・無保証人保証枠)(セーフティネット保証4号と5号を併用する場合には、保証限度額を共有) |
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保証割合 | 借入債務の100% | 借入債務の80% |
信用保証率 | 各協会所定の利率(概ね1%以内) | 各協会所定の利率(概ね1%以内) |
担保 | 応相談 | 応相談 |
Q1.1:まだ事業をはじめたばかりです。保証は受けられますか?
新型コロナウイルス感染症に関連する各種資金繰り支援制度は、創業3か月以上の事業者を対象としています(なお、新型コロナウイルス対策マル経融資及び新型コロナウイルス対策衛経については、創業1年1か月以上の事業者が対象とされています。但し、こちらの運用については今後変更の可能性がありますので、最新の情報をご確認ください。)。創業3か月未満の事業者の場合には、他の融資制度をご活用ください。
保証制度の詳細や申請方法等については、各都道府県等の信用保証協会へお問い合わせください。
<参考|中小企業庁ホームページ>
・セーフティネット保証制度 中小企業信用保険法第2条第5項及び第6項
・セーフティネット保証制度(4号:突発的災害(自然災害等))
・セーフティネット保証制度(5号:業況の悪化している業種(全国的))
Q2 危機関連保証について教えて下さい。
危機関連保証とは、大規模な経済危機や災害(リーマンショックや東日本大震災)等による信用収縮が生じている場合において、一部の業種を除き全国・全業種の中小企業又は小規模事業者を対象に、一般枠やセーフティネット保証の保証枠とは別枠で、信用保証協会が実施する保証制度です。本制度を信用保証協会による一般枠の保証及びセーフティネット保証と併用することにより、事業者は、最大で8億4,000万円の保証枠を利用することができます。
セーフティネット保証と同様に、信用保証付融資における保証料・利子減免制度を併用することで、都道府県や民間金融機関から実質的に無利子で保証付融資(保証料も実質的に無償)を受けることができます。
なお、特別利子補給制度と同様に、保証料・利子減免制度は、「利下げ」や「保証料の免除」ではなく、「保証料及び利息相当額の事後的な返金制度」という建付けとなっておりますので、この点ご留意ください。
[利用対象事業者の概要]
以下の1又は2に該当すること。
1. 新型コロナウイルス感染症の発生により、原則として、最近1か月間の売上高等が前年同月比で15%以上減少しており、かつ、その後2か月間を含む3か月間の売上高等が前年同期比で15%以上減少することが見込まれること。 2. 業歴3か月以上1年1か月未満の場合等は、以下の①、②又は③のいずれかに該当すること。 ① 直近1か月の売上高等が過去3か月(最近1か月を含みます。)の平均売上高等と比較して15%以上減少していること。 ② 「直近1か月の売上高等」が「2019年12月の売上高等」と比較して15%以上減少しており、かつ、「その後2か月を含む3か月間の売上高等」が「2019年12月の売上高等の3倍」と比較して15%以上減少することが見込まれること。 ③ 「直近1か月の売上高等」が「2019年10月から12月の平均売上高等」と比較して15%以上減少しており、かつ、「その後2か月を含む3か月間の売上高等」が「2019年10月から12月の累積売上高等」と比較して15%以上減少することが見込まれること。 (売上高等の減少について、市区町村長の認定が必要) |
[保証制度の概要]
保証限度額 | : | 保証限度額:最大2億8,000万円 ・ 普通保証枠:2億円以内 ・ 無担保保証枠:8,000万円以内(うち2,000万円については無担保・無保証人保証枠) |
保証割合 | : | 借入債務の100% |
信用保証率 | : | 各協会所定の利率(概ね0.8%以内) |
担保 | : | 応相談 |
Q2.1:まだ事業をはじめたばかりです。保証は受けられますか?
新型コロナウイルス感染症に関連する各種資金繰り支援制度は、創業3か月以上の事業者を対象としています(なお、新型コロナウイルス対策マル経融資及び新型コロナウイルス対策衛経については、創業1年1か月以上の事業者が対象とされています。但し、こちらの運用については今後変更の可能性がありますので、最新の情報をご確認ください。)。創業3か月未満の事業者の場合には、他の融資制度をご活用ください。
保証制度の詳細や申請方法等については、各都道府県等の信用保証協会へお問い合わせください。
<参考|中小企業庁ホームページ>
・危機関連保証制度(大規模な経済危機、災害等による信用収縮への対応)
Q3 信用保証付融資における保証料・利子減免制度について教えて下さい。
セーフティネット保証や危機関連保証を利用して都道府県や民間金融機関から保証付融資を受けた事業者のうち、一定の売上減少要件を満たす者を対象に、一定の融資金額の範囲内で、借入後3年間の利子補給と一定の保証料補助を行う制度です。一定のケースにおいては、セーフティネット保証及び危機関連保証等における各保証付融資と本制度を併用することにより、一定の融資金額の範囲で実質的に無利子・無保証料・無担保での借入れを行うことも可能となります。
また、信用保証協会による保証付の既往債務についても、適用対象要件を満たせば借換可能です。
[保証料・利子減免制度の概要]
適用対象 | : | 個人事業主 | 小・中規模事業者 | ||
適用要件 | 売上高等 5%以上減少 |
売上高等 5%以上減少 |
売上高等 15%以上減少 |
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保証料 補助割合 |
10/10 | 1/2 | 10/10 | ||
利子補給 | あり | なし | あり | ||
※売上高等は前年同月比で比較。 | |||||
融資上限 | : | 3,000万円 | |||
保証料補助割合 | : | 10/10 又は 1/2 | |||
保証料補助期間 | : | 全借入期間 | |||
利子補給額 | : | 借入後当初3年間の金利相当分 | |||
利子補給期間 | : | 借入後当初3年間 |
なお、制度の詳細や申請方法等については経済産業省等のホームページによる公開が予定されています。
<参考|経済産業省ホームページ>
・新型コロナウイルス感染症で影響を受ける事業者の皆様へ
さいごに
本記事でご説明いたしましたとおり、新型コロナウイルス感染症により影響を受けた事業者は、政府系金融機関から融資を受けるだけではなく、様々な保証制度を活用することにより、民間金融機関等からの融資を受けることも可能となります。
本記事は以上です。これまでの「新型コロナウイルス関連の資金繰り支援制度(総論)」、「新型コロナウイルス関連の資金繰り支援制度(政府系金融機関)」及び「新型コロナウイルス関連の資金繰り支援制度(生活衛生関係営業事業者向け)」の各記事とあわせて、新型コロナウイルス感染症の影響を受ける中小企業及び小規模企業への各種資金繰り支援制度の概要についての説明が終わりました。
業種や売上高の減少率によって、政府系金融機関から実質無利子で融資を受けることができたり、保証料や利子を実質的に負担せずに信用保証協会からの保証をつけて民間金融機関等から融資を受けることができます。新型コロナウイルス感染症により事業に悪影響が生じている企業も、これらの資金繰り支援制度をうまく活用することで、一時的に悪化した業況を立て直し、再建を図っていだければと思います。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響を受ける中小企業及び小規模企業への支援策としては、ご紹介した各種融資制度に加えて、各種補助金・助成金による支援制度があります。ここまでご紹介した各種融資制度と比較すると、一般的には少額にはなるものの、返済の必要がないという点が最大のメリットといえます。「新型コロナウイルス関連の給付金・補助金・助成金(総論)」においては、各種補助金・助成金制度の全体像を、「新型コロナウイルス関連の給付金・補助金・助成金(各論①)」及び「新型コロナウイルス関連の給付金・補助金・助成金(各論②)」においては、各種補助金・助成金制度の概容をまとめています。これらの記事も併せてご確認頂き、補助金・助成金制度のご活用にお役立てください。